プラチナデータ [Book]
東野さんの近作読み逃していました。得意のジャンル。犯人は早い段階で消去法でわかるのですが、「プラチナデータ」の意味は後半までわかりません。
近未来に実際にこのような社会になる可能性もあります。初期の作品のようないかにもミステリー風で、楽しく読めました。
花の鎖 [Book]
湊さんの本は、告白と往復書簡と本書の3冊しか読んでいませんが、どれも「未必の故意」を意識して書かれています。ストレートにナイフで殺害とかでない分、怖さが、そう人間の深層心理での殺害的な怖さがあります。拳銃やナイフは遠いところの話のように感じますが、水に溺れるとかは、より身近に感じるから。
さて本作「花の鎖」。1日で読了。最初のうちは、3つの物語のつながりがよくわからず、混乱していましたが、徐々に関係がわかってくると面白くなってきて・・帯に「毎年届く謎の花束。差出人のイニシャルはK」となっていたのですが、イニシャルKの登場人物ばかりなんですねえ。
個人的には、謎解きとかでなく自分の趣味である「花」とか「山」とかがからんでくるので、楽しかったです。コマクサとか八ヶ岳とか思い出し。そして人間のイヤなところと愛せるところ。帯に湊かなえのセカンドステージ始動となっていますが、多分、イヤなところ<愛せるところへ徐々にシフトしているような印象を本書から受けました。
往復書簡 [Book]
湊かなえさんは告白が有名すぎて、映画化もされたことで、怖いイメージがあるかもしれません。
本書は、手紙のやりとりだけで書かれた形の3つの別々の中編です。特に2作めの20年後の宿題がよかった。告白もそうでしたが学校を舞台にした話がリアリティあります。それにしても、湊さんの文体はものすごく読みやすい。多分私の読書速度が一番早いのは湊さんのような気がします。文体だけでなく、先を読ませる内容もあるのでしょうが。
ひとつだけ不自然だったのが、何人もの人物が手紙を書いているのですが、みんな揃って文章が作家なみに上手ということでしょうか。読んでいるときは全く気になりませんでしたが、おわってふと思いました。まあ、とるにたらない些細なことです。
おやすみラフマニノフ [Book]
一応ミステリーです。ミステリー慣れた方なら、すぐに犯人とかわかってしまいます。前作のさよならドビュッシー同様岬洋介さんの活躍を期待すると、今回は探偵っぽい要素は少なく、人生の先生という要素が強いように感じます。24才という設定はありえないと思いますが(笑)
そんなことよりも、やはりこのシリーズは音楽描写です。今回のラフマ2番とかチャイコフスキーのニ長調は本当に凄い。クラシックコンサートによく行っていた頃が鮮明に蘇ってきます。特に中盤のチャイコフスキーを体育館で演奏するシーンでは目頭が熱くなりました・・・音楽好きな方に是非読んでもらいたい1冊です。作者本人は、長男が音楽大学でピアノを専攻している為、そこからの情報をベースにして書いた作品で「音楽の通信簿は常に「2」だった、ピアノはいまだに触ったことがない。見たことがある程度です」と語っており、音楽をテーマに選んだのも、実はジャンルとして作品が少なかったというだけの理由である。と言っていますが、到底信じられない程、豊かな音楽表現なんですけどね・「2」かもしれませんが、間違いなく音楽好きだと思います。それも半端でなく
世界の終わりとハードボイルドワンダーランド [Book]
村上春樹は、ねじまき鳥クロニクル、海辺のカフカ、1Q84と、乱読中にふと帰ってくる感じで読んでます。世界の終わりは、上記一連の作品のきっかけになったような感じ。1985年の作品とは思えない。特に百科事典を楊枝に書き込む理論が、今でもとても新鮮です。それは時間の概念を永遠に捉えることができるということ。村上さんの本を海辺で時間を気にせずゆっくり読むことができたら、いつの間にか違う世界に行けそうな気がします。
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 新装版 (新潮文庫 む 5-4)
- 作者: 村上 春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/04
- メディア: 文庫
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 下巻 新装版 (新潮文庫 む 5-5)
- 作者: 村上 春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/04
- メディア: 文庫
冷静と情熱のあいだ [Book]
翼 [Book]
村山さんの本は沢山読んでましたが、ブログに書くのは初めてかも?
で、今回読んだのは翼。イメージより力強い小説でびっくりです。天使シリーズやオイコーシリーズもよいですが、翼はよかったです。直木賞の星々の舟よりずっと好きです。つまり、今まで読んだ村山さんの中で一番(といってもまだまだ読んでいない本も沢山あるのですが)。
広大な自然の背景の中で主人公の真冬の生き方が非常に魅力的に描かれています。中盤から後半にかけてあっという間に読み切りました。真冬がメンタル的に病んでいるにもかかわらず、力強く生きていこうと前に進んでいくところが、なんというか弱々しいけど、芯が強く描かれていて、ものすごく共感できました。人を愛せる人間になるか、憎しみに支配された人間になるか、幸福になるための努力をするか、不幸への坂を滑り落ちるにまかせるか(中略)あんたが自分で選ぶことだ。
インディアンの長老の口で語らせていますが、こんな村山さんは知りませんでした。もう一度読み返してみよう。もう少しじっくりと。
シャドウ [Book]
道夫秀介、ラットマンだけブログで紹介しましたが、その後、向日葵の咲かない夏、そしてシャドウと読みました。向日葵も不思議で面白かったですが、今回はシャドウの話をします。
人が信用できなくなるって、とても寂しい。妄想にとらわれて、事実でないことを、現実におこっていることと本気で信じ込んでしまう。精神科医の病棟が舞台です。
自分でも、事実でないことを完全に思い込んでいて(勘違いレベルであれば笑い話になりますが)そのまま気がついていないことってありませんか?そういうことが重なると、それは完全に妄想になり、でも事実ではないので、現実と妄想の世界が混乱して、なんだかよくわからなくなります。シャドウはそのあたりがとってもよく描写されていて、読んでいてちょっと怖くなりました。
自分で見たもの、聞いたもの、または本当に信頼できる人の話、何を信じていけばよいのかは、人それぞれだと思いますが、しっかり自分をもって生きていきたいです。
永遠のゼロ [Book]
常になんらかの本を読んでいないともたないのですが、久しぶりにブログに書きたい本に出会いました。そもそも映画でなく、本を読んで涙腺がゆるむなんてことは過去にあったでしょうか?
あとがきの書評で、故・児玉清さんが、「僕は号泣するのを懸命に歯を食いしばってこらえた。が、ダメだった。」まさにそんな感じでした。
8月だから、終戦、戦争にちなんだ本でも読もうと思ったのがきっかけです。現代に生きる26才の青年とその姉が祖父の人生を調査するというストーリ。
最後に姉が「大好きな人と結婚しないとおじいちゃんに怒られちゃう」このセリフ素直に感動しました。
かけがえのない一度きりの人生。一瞬も無駄にしたくない気持ちになります。
夜は短し歩けよ乙女 [Book]
図書館革命 [Book]
図書館シリーズ最終巻です。
小説は書き終わって終わりではなく、その後もキャラクターは生きていて、彼らの人生は終わるわけではない。あとがきで有川さんが書いていました。
なるほど~、その後、彼らはどういう人生を歩んでいくんだろうと、読者や著者自身も想像するって、楽しいですね。このシリーズのキャラはそんな楽しみを読者に残してくれたように思います。
興味深かったのは、巻末の故児玉さんとの対談。有川さんの取材がフレデリック・フォーサイス(ジャッカルの日の著者/英国)型ということ。写真やメモを全くとらない取材方法。メモに頼らないので、相手と素で対峙しるため、相手も本音で話してくれる。う~ん、仕事でも使える
最終巻、おもしろかったです。
龍は眠る [Book]
日本推理作家協会賞を1992年に受賞した作品。宮部さんが32才の時にこの小説を書いたことになります。いや、賞が92年だから30才くらいの時に書いていたのかも・・
改めて、彼女は天才だったんだと。一見超能力という無形の題材で、そこが興味で読み進めると、人の心理の奥を考えさせられる。主人公は「善人」です。間違いなく。XMENのチャールズも「善人」だった。
そう考えると、悪人のテレパスってものすごく怖い存在になる。
我々は身体のうちに、それぞれ一頭の龍を飼っている。底知れない力を秘めた、不可思議な形の、眠れる龍を。そしてひとたびその龍がおき出したら、できることはもう祈るだけしかない。
ラストに出てくる言葉です。これは超能力というより、普通の私たちの心の問題を言っているんだと思います。
真夏の方程式 [Book]
ガリレオシリーズ最新刊。400ページ通勤の行き帰り2日で読み終えました。つまりいつもの東野さんらしく、読みやすかった。最初の100ページで「おっ、新鮮かも」と期待したのですが、読後感は、ついこの前の麒麟の翼等とあまり変わりませんでした。ハラハラ、ワクワク、ドキドキとかは無く、淡々と進み、終わる。最初に新鮮と感じたのは、小学生が出てきて、湯川と絡むから。
最後まで、湯川と小学生のふれあいは、よかったです。
そろそろ東野さんには、読後に感動が残るような、新作を期待したくなります。旧作に素晴らしい作品が多いので、余計読む前の期待が大きすぎるのかもしれません。
遠回りする雛 [Book]
米澤さんの本は初めて。2010年このミス作家別投票数第一位だそうです。
高校一年生が主人公。名探偵コナンの工藤真一とは全然キャラが違いますが。神山高校古典部在籍。古典部シリーズというのの第四弾だと読んでから知りました。第一段から読むべきだったか・・
最初は退屈で速読派の私にしては時間がかかっていましたが、最後の方からエンジンかかって、全7作の短編連作なのですが、最後の3作くらいはスピードアップしていました。
ミステリというには珍しく、殺人事件とか一切無縁で、ほんの小さな疑問を解いていく感じです。ホットするような作品でした。
図書館危機 [Book]
永遠の途中 [Book]
R.P.G. [Book]
さて、R.P.G.です。
模倣犯の武上刑事と、クロスファイアの石津ちか子刑事が合同捜査するという設定。模倣犯とクロスファイアが傑作すぎたせいか、おとなしい印象の小説に。大半が取り調べ室でのやりとりで、武上刑事らしさ、石津刑事らしさが存分に表現されています。武上刑事は摸倣犯より能動的。2人ともほとんど過去の事件には触れていません。石津刑事が青木淳子のことを一瞬だけ回顧しますが、文庫本で2~3行程度のこと。面白い試みの小説です。先の2作品が非常にインパクトがあるので、こういうエピソード的なものを書き留めておきたくなられたのかもしれません。宮部さん初の文庫描き下ろしだから。
クロスファイア上下/鳩笛草 [Book]
宮部さんのRPGという本をよんだので、紹介しようと思いましたが、クロスファイア抜きでは紹介できないので。こちらを先に。
「あたしは装填された銃だ。持てる力を行使し、無軌道に殺人を続けるわか者たちを処刑する」青木淳子の「戦闘」は続く。(中略)連続焼殺事件の背景に念力放火能力者バイロキネシスの存在を感じた石津ちか子・牧原両刑事は、過去の事件関係者を洗い、ついに淳子の存在に気付くのだった。正義とは何か!?衝撃の結末! 以上下巻裏表紙から抜粋。
とにかく一気に読まされます。淳子は最後どうなるんだろうか。宮部さん、本当にエンターテイナーです。私はクロスファイアを読んでから、鳩笛草を読みました。鳩笛草は短篇集で、燔祭という話に青木淳子が登場するので、これから読まれる方は短編集からお勧めします。ほかの2つの短編も超能力を持つ女性が主人公です。予知と読心。読んで失敗はないです。
クロスファイアは、2000年に映画化されています。私は見ていませんが、時間があればTUTAYAかな。
図書館内乱 [Book]
図書館戦争シリーズ第二弾。
本を読んで、感動したい。泣きたい。学びたい。という方にはおすすめしません。単純に楽しみたい。笑いたい。という方には是非一読を
主人公郁の言動に読んでいて笑いをこらえるのが大変。一応ストーリもしっかりしているので、単純な恋愛小説にはなっていません。が、笑えます。図書館シリーズがライトノベルかどうかという議論もあるようですが、楽しめて、ストレス解消できればあまり関係ない議論だと思います。
文庫版には先日亡くなられた児玉さんとの対談が収録されています。児玉さんは本が好きだったんですね。残念です。合掌。
図書館戦争 [Book]
有川浩、アリカワ ヒロと読みます。5/1のぼくらの時代に湊さん、万城目さんと出演していました。日曜朝ののんびりした感じの番組が好きです。たぶん司会とかいないのがよいのかもしれません。
番組では、有川さんは阪急電車中心に話をされていました。
で、そんな阪急電車(実はまだ見ていません)のような普通の世界?を描いた作品は少なく、SF近未来的な小説が多いのが有川さんです。図書館戦争、題名からは中身が想像できなかったのですが読んでみると、「ありえない」設定で話が進んでいきます。読み終わるとありえない設定のはずだったのですが、その設定を受け入れてしまっているので、不思議な感覚です。ちょっとラブコメ的でもあり、現代社会の比較的風刺であり、ライトに読めます。私が読んだのは初回の新書版でしたが、続編が文庫化されたようなので、読んでみよう。アニメ化されているので、こんな感じです。
このED作った方(フリースタイルさん)、凄いです・・Base Ball Bearの歌詞とバッチリ
あ、ご存じない方のために、有川さんは女流作家です。
模倣犯 [Book]
昨夜遅く(今日か・・)読み終えました。約500pの文庫本5冊。ミステリーにしては超長編でした。1人1人の人物描写が丁寧で、全く飽きないで一気に読めます。とても丁寧なので、登場人物がそれぞれ魅力的なのです。
とんでもない犯人なのですが、現実にこういう考えを持っている人は結構いそうで、だからこそまるっきりの虚構な感じがしません。とにかく自分が他者と違う、極めて優秀ということを多くの人に証明したい。その目的のためなら、過程で何をしても、何が起きても、自分以外の人間のことはなんとも思わない。思わないようにしているのではなく、自然に「思わない」のです。ただし、他人にどう思われているかは非常に大事な価値観。で、最後にそこが隙となるのですが・・予備知識が全く無かったので、模倣犯って長編なので、事件が2つ3つあって実は最初の事件が真の模倣だったとかいうオチなのかしら、と想像していましたが、そんな単純ではなかったです
当時はあまり興味なかったのですが、昔、中居クンの映画として記憶していたので、調べてみました。2002年の映画だったのですが、散々な評価で驚きました。小説と映画の内容がかなり違っているからみたいです。機会があったらレンタルしよう。そして自分で感じてみようと思います。
東野さんは読むとしても同じ本を2回目3回目になるので(それはそれでよいのですが)宮部さんは、まだかなり読んでいない文庫もあるので、楽しみです。先月いくつか本の感想書きましたが、それぞれに面白いのですが、宮部さんの筆力は群を抜いているように感じました。宮部ファンの方には今頃わかったのかよと笑われそうです
それにしても、眠いです・・
かたみ歌 [Book]
葉桜の季節に君を想うということ [Book]
ラットマン [Book]
道尾秀介1975年東京生まれ。前から気になっていた作者ですが、向日葵の咲かない夏と、ソロモンの犬を読む前に、たまたま家に文庫があったので、ラットマンを読んでしまいました。
題名の『ラットマン』とは認知心理学で用いられる有名なだまし絵のようなイラストのことで、鼠のようにも人間のようにも見える肖像画のことです。与えられた情報次第で、どちらにも見えてしまうのですね。かなり前半部分で、ラットマンの説明があったにもかかわらず、道尾作品が初めてだった私は、途中から、題名の意味が飛んでしまっていて、読み終わってから、そうだったのか・・というしまつでした。素直に、面白いミステリーです。素直に騙されましょう。
まだまだ若いので、これから楽しみな作者の1人です。
燃えつきるまで [Book]
麒麟の翼 [Book]
東野さん加賀恭一郎シリーズの最新作。最近の作品だな~という感じでした。最近の作品は、確かによく構成されていて面白いし、相変わらず一気に読むことができるのですが、初期のようなミステリーっぽいものではなく、重点が人に傾いてきている感じがします。読み終えた後も何か残るものがあります。純粋なエンターテイメントミステリーの初期の作品も大好きです。
本作を読み終えた後、なぜか最近読んだ「告白」を思い出しました。内容は全く違うのですが、教育というキーワードで思い出したのかもしれません。あと、日本橋の町を散策したくなりました。